安倍晋三首相が11月17日、国会で所信表明演説を行った。翌日の新聞各紙は社説で、左派の朝日から右派の読売まで一斉に「物足りない」と批判した。どこが物足りなかったのか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏が読み解く――。
巨大与党トップの横柄さと驕り
安倍晋三首相が11月17日、国会で所信表明演説を行った。翌18日の新聞各紙は社説で、左派の朝日から右派の読売まで一斉に「物足りない」と批判した。
実際、演説の中身は具体性に乏しく、分量的にも昨秋の所信表明演説の半分にも満たなかった。これではとても謙虚な姿勢とはいえない。衆院選で大勝したことで、巨大与党トップの横柄さと驕りが見え隠れする。
残念ながら首相の所信表演説に興味をもたない読者も多いかもしれない。しかし日本の舵を握る安倍首相が日本をどこに向かわせようとしているのかをしっかり見極める貴重な機会だ。じっくり読み込んでほしい。
「5カ月ぶり」「放置」と批判する朝日
その主張と訴えに思わず「その通り」とうなずいてしまう。「首相こそ『建設的』に」との見出しを付けた朝日新聞の社説である。
見出しと次の冒頭部分は朝日らしい皮肉がにじみ、鼻にはつくが、社説の中身は評価できる。
「建設的な議論を行い、政策をともに前に進めていこう――。安倍首相はきのうの所信表明演説で、野党に呼びかけた。ならば首相にも求めたい。首相こそ、この特別国会での議論に建設的に臨むべきである」
こう書き出したうえで朝日社説は以下のように論を展開している。
「忘れたわけではあるまい。この特別国会は6月に通常国会を閉じて以降、約5カ月ぶりの本格論戦の舞台である。この間、野党は憲法に基づき臨時国会を求めてきたが、首相は3カ月も放置したあげく、召集直後に衆院解散の挙に出た」
安倍首相に対する呼びかけも手厳しい。「5カ月ぶり」「放置」という言葉も安倍首相には痛く響くに違いない。