「テロ国家再指定」でわかった意外な事実
核・ミサイル開発を止めない北朝鮮が「テロ支援国家」に再び指定された。トランプ米政権は北朝鮮が核の放棄に向けた対話のテーブルにつくまで徹底して圧力を強めていく方針だ。
一方、北朝鮮はこの2カ月間ほどミサイル発射などの挑発を止めてはいる。しかし今回の再指定で反発を強める危険性が高い。いつなんどき、挑発行動を起こしてもおかしくない状況で、厳重な警戒が必要であることは間違いない。
それにしてもよく分からないのが、関係各国の北朝鮮に対する水面下での交渉である。真相が見えてこないなか、新聞各紙は11月22日付の社説で一斉に再指定を取り上げた。なかでも朝日新聞と日経新聞の社説を読み比べると、面白いものが見えてくる。
朝日は北朝鮮の味方をするのか
朝日新聞の社説はテーマを「米の対北政策」として「敵視だけでは前進せぬ」との見出しを立てる。書き出しはこうだ。
「米国の外交は伝統的に、敵と味方をはっきり選別する傾向がある。その象徴的な制度が『テロ支援国家』の指定だ」
見出しも書き出しも朝日らしいひねりが利いている。悪くいえば、朝日らしいアイロニーが見え隠れする。
続けて朝日社説は「国際テロの背後にいる国々を認定し、制裁を科すもので、北朝鮮が9年ぶりに登録される」と書き、「『ならず者国家』。米国がそんな呼び方もする敵視の対象のリストだ。米国の『敵視政策』こそ問題だとする北朝鮮が、反発を強めるのは必至だろう」と推測する。
一瞬、朝日は北朝鮮の味方をするのか、と読者は驚かされる。
トランプ批判を忘れない朝日の書きぶり
ところがこの直後に「しかし」と筆を運び、こう続ける。
「これも北朝鮮が自ら招いた事態である。今年、金正恩(キムジョンウン)氏の実兄、正男(ジョンナム)氏がマレーシアで殺された。進展のない日本人拉致問題を含め、人権無視のふるまいは目にあまる」
「トランプ政権の粗雑な外交に世界は揺れているとはいえ、北朝鮮の人権犯罪に対する非難に国際社会の異論はあるまい」
読者に驚きを与えて自社の社論に引き込み、「暗殺」や「拉致」という具体的事例を挙げ、「目にあまる」「人権犯罪」と批判する。巧みな書き方といえばそうかもしれないが、北朝鮮に肩を持つ論調など存在し得ないのだから「もっとストレートに書いたらいい」と沙鴎一歩は思う。
さらに感心させられるのは「粗雑な外交に世界が揺れる」とトランプ批判を忘れない書きぶりである。