学校法人「加計学園」の獣医学部について、文部科学省の大学設置・学校法人審議会(設置審)は、来年4月の開学を認めるとの結論をまとめ、林芳正文科相に答申した。だがプロセスは不透明なままだ。設置審の審査資料には、認可にあたり抜本的な見直しが必要とする7つの「警告」が書かれていた。読売新聞は社説で、この「警告」には触れず、「留意事項」の説明にとどめている。なぜなのか――。
※記事内での「警告」と「留意事項」について、誤解を招く表現があったため、タイトルなど一部をあらためました(2017年11月20日追記)。
当初の新設計画からして杜撰だった
文部科学省の大学設置・学校法人審議会(設置審)が、学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の運営する岡山理科大の獣医学部新設を認める答申をした。これを受け、林芳正文科相は11月14日、新設を認可した。
しかし、審査の過程で指摘された意見をみていくと、国家戦略特区で獣医学部の新設を認めた際の条件がどこまで満たされているのかとの疑問が残る。特区での新設が認められた経緯も実に不透明なところが多い。結局、当初の新設計画からして杜撰だったのだ。
今回、設置審が獣医学部の新設を認めたことで、政府・与党は加計問題・疑惑に終止符を打ちたい考えのようだ。これに対し、野党は疑惑解明に全力を挙げる方針だ。国会での野党の追及でどこまで加計疑惑が解明されるのか。大きく注目されている。
新聞の社説も政府側に立つ社説と、与党と同じく疑惑追及を訴える社説とにはっきり分かれる。
文科省の審査をパスした事実は重いのか?
「教育の質確保が最優先課題だ」
これは11月11日付の読売新聞の社説の見出しだが、いかにも正当な主張のように思えてしまうところが恐ろしい。
読売社説は「半世紀ぶりの獣医学部新設を、地域に役立つ獣医師の育成につなげなければならない」と書き出す。
そのうえで「文科学省の大学設置・学校法人審議会が、加計学園が申請していた岡山理科大獣医学部の来春の開設を認めるよう答申した」と説明を加える。
そしてこの指摘である。
「利害関係や政治的圧力を排した専門家による機関の審査をパスした事実は重い。林文科相は近く認可する意向を示している」
本当に文科省の審議会の審査を通ったことは重いのだろうか。