総選挙は自民党の大勝に終わった。それでも安倍晋三首相をはじめとする自民幹部は「謙虚」という言葉を繰り返している。それは小池百合子都知事にギリギリまで振り回されたという認識があるからだろう。ジャーナリストの沙鴎一歩氏は「とにかく野党がだらしなかった」と指摘する。この先、政局はどう動くのだろうか――。
10月24日、立憲民主党の両院議員総会であいさつする枝野幸男代表(手前左)。東京・永田町の参院議員会館。(写真=時事通信フォト)

大騒ぎをした野党の責任は大きい

「だれが勝ったのかよく分からない」「これほどメチャクチャになった選挙も珍しい」「これまでの大騒ぎは何だったのだろう」――。今回の衆院総選挙に対して、大方の見方はこんなところではないか。

まず安倍晋三首相が衆院解散を表明し、対抗して都知事の小池百合子氏が間髪入れずに新党を立ち上げた。これが事実上、選挙戦のスタートだった。そしてここまでは実に面白かった。だが、小池新党と民進党との間でゴタゴタやっているうちに小池人気が衰え出し、代わって小池氏に追い出された枝野幸男氏の立憲民主党に人気が集まっていった。

結局、勝利を収めたのは自民党だった。それでも自民の面々の顔色はさえない。漁夫の利で勝っただけで、自民党が高い信任を得たとは言い切れないからである。とにかく野党がだらしなかった。それが証拠に安倍首相をはじめとする自民幹部らは「謙虚」という言葉をやたらと繰り返している。

今回の衆院選は一体、何だったのだろうか。大騒ぎをした野党の責任は大きい。民進党代表の前原誠司氏と希望の党代表の小池氏に焦点を絞って論じてみたい。

民進党は「議員生命」にしか関心がないのか

前原氏は10月25日、都内で講演した。その講演の中で、希望の党が思うように票を獲得できなかったことを考え、希望の党との合流自体を見直す方向性を示し、「民進党の新たな方向性を定めたい」と述べた。

当初、前原氏は民進党をすべて希望の党に合流させることを主張していた。民進党は新しい方向性を求め、27日に両院議員総会を開き、30日には全国幹事長会議も開くという。

選挙が終わっても、ゴタゴタの好きな民進党の体質は変わらないようだ。「自分たちの議員生命さえ維持できればいい」と考えるからだろう。この際、民進党にはだれのための国会議員であるかをしっかり意識してもらいたい。国民の信任が得られてこその政治家であり、政党である。