10月15日から21日までは「新聞週間」だった。恒例の「お祭り」だが、意識した読者はどれだけいただろうか。今年の標語は「新聞で見分けるフェイク知るファクト」だった。新聞の「敵」は本当に「フェイクニュース」なのだろうか。新聞社の元論説委員でジャーナリストの沙鴎一歩氏が考察する――。

ウソのニュースが「斜陽業界」を脅かす

新聞週間が10月21日に終わった。このことを知る読者は一体、どれくらいいるだろうか。今年の新聞週間は15日からの一週間。期間中、新聞大会が開催され、新聞協会賞が授賞されたほか、新聞大会決議が採択された。全国各地でもさまざまなイベントが行われた。とにかく新聞業界挙げてのお祭りなのだ。

しかし一般の人はほとんど知らないはずだ。いくら紙面で報じても、読者の関心に届かなければ、話題は広がらない。

今年の新聞週間標語は「新聞で見分けるフェイク知るファクト」である。フェイクとは偽のニュースのことで、アメリカの大統領選挙をきっかけに世界的な問題になった。ウソでも取り上げるネットのニュースサイトが、新聞社の経営を脅かしている。アメリカでは地方紙の廃刊が社会問題になっており、日本でも新聞業界は斜陽産業といわれて久しい。

どうすれば新聞の読者は増えるのか。インターネット上にあふれるフェイクニュースをチェックし、その嘘を次々と暴くことができれば、読者を取り戻すきっかけになるはずだ――。標語はそうした考えによるものだろう。

読売新聞の社説(10月15日付)。見出しは「新聞週間 虚偽のニュースを見分けたい」。

クリントン候補がイスラム過激派に武器売却?

各紙の社説は「フェイクニュース」についてどう書いているだろうか。

10月15日付読売新聞の社説は「新聞週間」というタイトルを付け、その見出しは「虚偽のニュースを見分けたい」である。

まず「『フェイクニュース』の問題は、昨年の米大統領選で顕在化した」と書き、「『クリントン候補がイスラム過激派組織に武器を売却した』といった根拠不明の情報が、選挙中に拡散した。トランプ大統領を誕生させた選挙結果に少なからず影響を及ぼしたと指摘される」と米大統領選を振り返り、「極めて憂慮すべき現象である」と指摘する。