衆院選の選挙情勢は、自民党が単独過半数を大きく上回る勢いだ。それに比べて「希望の党」は失速している。週刊誌などのメディアは、手のひらを返したように同党の小池百合子代表(東京都知事)をたたきはじめた。だが、今回の選挙の原点は、安倍晋三首相が突然解散に打って出たところから始まった。その原点が忘れられているのではないか――。
読売新聞(10月12日付、手前)と朝日新聞(同じく10月12日付、奥)の1面トップ。

「小池劇場」には次の展開なく……

衆院選の選挙情勢は、自民党が単独過半数を大きく上回る勢いだ。それに比べて「希望の党」は失速している。原因は代表の小池百合子氏の不出馬にある、と沙鴎一歩は考える。

小池氏は「リセット」という言葉を巧みに使って、自ら党の代表に就任した。それ以来、メディアは“小池魔力”に浮かれ、報道を過熱させてきた。しかし、小池劇場には次の展開がなく、魔力にも陰りがみえている。いまメディアにとって大切なのは、原点に戻ることである。

そもそも今回の衆院選は、安倍晋三首相が突然解散に打って出たところから始まった。安倍首相の狙いは、「森友・加計問題」の追及をかわして与党の勢力を挽回することだとみられている。

「森友学園」や「加計学園」をめぐる疑惑は、国会での論争も不十分に終わっている。メディアはそこを忘れてはならない。

どこも「自民優勢」「希望劣勢」

「自民 単独過半数の勢い」「希望 伸び悩み」「衆院選序盤情勢 本社調査」。10月12日付の読売新聞(東京本社発行の最終版)1面トップの記事の見出しである。

そのリードは「読売新聞社は衆院選について10、11の両日、全国の有権者を対象に世論調査を行い、序盤の情勢を探った。自民党は小選挙区選、比例選とも優勢に戦いを進め、単独で過半数(233)を大きく上回る勢いだ。希望の党は、公示前の57議席をわずかに超える程度で伸び悩んでいる」などとまとめている。

同日付の朝日新聞(東京本社発行の最終版)も1面トップで衆院選の情勢調査の結果を掲載している。見出しは「自民堅調 希望伸びず」「立憲に勢い」と読売と同様の分析だ。毎日新聞や産経新聞、日経新聞も自社の世論調査の結果を掲載し、その分析はどこも「自民優勢」「希望劣勢」である。