衆院総選挙で自民・公明の与党が過半数割れに追い込まれ、「第三極」の国民民主や維新の動向に注目が集まっている。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「“モテ期到来”などと浮かれている場合ではない。国民民主と維新はいま危機的な状況にあると考えたほうがいい」という――。
撮影に応じる玉木代表 国民民主党
写真=共同通信社
当確者のボードと撮影に応じる国民民主党の玉木代表=2024年10月27日午後8時49分、東京都新宿区

国民民主党、日本維新の会の「危機的局面」

「自公過半数割れ、立憲躍進」となった今回の衆院選(10月27日投開票)。連立与党、野党第1党のいずれも衆院の過半数の議席を獲得できず、選挙後の多数派工作に焦点が集まるなか、国民民主党や日本維新の会など、いわゆる「第三極」勢力がにわかに注目されている。

政局のキーマンになったつもりなのか、両党周辺にはどこか浮かれた空気さえ感じられるが、実のところ両党こそ、非常に難しい危機的局面を迎えていると筆者は思う。衆院に小選挙区制が導入されて以降の約30年、こうした「第三極」政党のほとんどは、両党のはざまにもまれて衰退するか、消えてなくなっているからだ。

そもそも彼らは今、本当にキャスティングボートを握っているのだろうか。

維新・馬場代表の見当違いな「モテ期」発言

開票作業が進む27日夜、筆者はニコニコ生放送の開票特番に出演していた。番組の途中、スタジオと各党幹部を中継で結んで話す場面があったが、維新の馬場伸幸代表のこの一言が印象に残った。

「しばらく『モテ期』が来ると思いますが……」

過半数割れした自民党と、過半数に届かなかった立憲が、ともに我が党にすり寄り、連携を打診するに違いない、ということだろう。野党第2党を維持したとはいえ、前回衆院選(2021年)の獲得議席を下回る38議席にとどまり、野党第1党を争った立憲とは100議席を超す差がついた維新だが、馬場氏は「モテ期」と言った途端、引き締めていた顔をほころばせた。

野党第3党・国民民主党の玉木雄一郎代表も同様だ。玉木氏の「自民寄り」姿勢も遠因となり党の分裂を招いた国民民主だが、今回は前回の11議席から28議席へと伸長。玉木氏は28日のBS日テレの番組で、自民党から打診があれば石破茂首相(党総裁)とも「会う用意がいつでもある」と前のめりに語った。

裏金問題で国民の大きな批判を受け、歴史的な議席減となった自民党と比べてさえ、はるかに支持を得られていない両党の「大政党を振り回す」ような態度には、正直首をかしげる。しかし、それを差し置いても、筆者は両党に問いたい。「そんなことより自らの足元は大丈夫なのか」と。