「国盗り」の野望は消えてはいない
なぜ、小池百合子氏は出馬しなかったのだろうか――。小池氏は大衆に大きなエネルギーを与える「本物の魔女」だからこそ、10月10日の公示日に出馬して初の女性首相を狙うはずだと、この沙鴎一歩は書いた。だが、出馬しなかった。
それでも彼女は公示日直前に発売された『文藝春秋』11月号に「『安倍1強』を倒し、私は本気で政権を奪う」と寄稿している。その意味するところはやはり、初の女性首相にある。「アベノミクス」に対抗し、「ユリノミクス」と自らの名を冠した経済政策を掲げて安倍晋三首相に挑むところなど、小池氏の「国盗り」の野望は消えてはいない。文藝春秋や新聞各紙の社説などを参考に小池不出馬の真意を探ってみよう。
慎重に世論をマーケティングした結果か
小池氏は文藝春秋への寄稿文の中でこう説明している。
「新党結成にあたり、私自身が電撃的にこの選挙に出馬するのではないか――という質問を幾度も受けました。ですが、また国政に戻れば、わざわざ崖から飛び降りて都知事になった意味がありません。私が昨年の都知事選で都民の皆さんからいただいた291万票は、『都知事として頑張れ』というメッセージです。私は、都政を磨くことで、日本全体のロールモデルにしたいと思っています」
「知事として頑張れという都民のメッセージ」「都政を磨く」「日本全体のロールモデル」など「小池百合子は都民を裏切りません」という分かりやすい声明で、公示直前にこれを出すところは、さすが海千山千の政治家だけあると感心させられる。
ただし彼女自身の心中を図れば、「出馬しようか」「でも出馬したら都民の信用を失う」「それは政治家として大きなダメージだ」「それでも日本初の首相になれれば、その信用は取り戻せる」「希望の党は選挙で第一党になれるだろうか」「どうしましょう」とかなり悩んだのではないだろうか。
しかも小池百合子という政治家はマーケティングが得意だ。そのうえ抜群に勘がいい。度胸もある。そこが勝負師といわれるゆえんである。だから今回の衆院選出馬についても慎重に世論を分析したはずだ。