衆院選の争点のひとつに「憲法改正」がある。自民、公明のほか、希望の党、日本維新の会が改憲に前向きだ。安倍晋三首相は、かつて憲法を「みっともない」と表現した。この表現をめぐり朝日新聞は社説で強く反発している。一方、改憲派の読売新聞は「一度も改正されたことがない」と論陣を張る。説得力があるのは、どちらか――。
朝日新聞の社説(10月16日付)。見出しは「衆院選 憲法論議 国民主権の深化のために」。

同じ改憲項目でも食い違いが目立つ

衆院選の争点のひとつに「憲法改正」がある。各政党の選挙公約を見ると、自民、公明のほか、希望の党、日本維新の会が憲法改正に前向きだ。このため、選挙後はかなりの確率で改憲論議が活発化し、憲法改正が現実的になるだろう。

ただ各党が挙げる改憲項目にはばらつきがあるうえ、同じ改憲項目でも食い違いが目立つ。その代表的なのが、自衛隊の扱いにつながる第9条の「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」である。

各党は選挙戦を通じ、党の憲法に対する考え方や立場を分かりやすく有権者に伝えてほしい。有権者も新聞やテレビ、インターネットを利用して、各党の立場を把握しておくべきだろう。

今回は護憲派の朝日新聞と改憲派の読売新聞、それぞれの社説を読み解きながら憲法論議を考えてみたい。

国民意識との間にある「大きなズレ」

10月16日付の朝日社説は、大きな1本社説で「憲法論議」をテーマにしている。難しい憲法論議にしてはかなり分かりやすい。朝日的いやらしさが多少あるものの、それでも十分評価できる。

「国民主権の深化のために」という見出しを掲げ、「憲法改正の是非が衆院選の焦点のひとつになっている」と書き出す。

「自民党、希望の党などが公約に具体的な改憲項目を盛り込んだ。報道各社の情勢調査では、改憲に前向きな政党が、改憲の発議に必要な3分の2以上の議席を占める可能性がある」と解説したうえでこう指摘する。

「政党レベル、国会議員レベルの改憲志向は高まっている。同時に、忘れてはならないことがある。主権者である国民の意識とは、大きなズレがあることだ」

「国民意識とのズレ」。朝日社説はいいところを取り上げていると思う。

「護憲50%」と「改憲41%」の差

朝日社説は続けて「民意は割れている」とズバリ断言する。

その根拠は何だろうか。そう考えて読み進むと、朝日社説は自社の今春の世論調査の結果をあげる。世論調査はどこの新聞社も、質問内容に社の色が付く。だからその点を差し引く必要はある。

その朝日の世論調査によると、憲法を変える必要が「ない」と答えた人は50%、「ある」というのは41%という。この11ポイントの差はかなり大きい。

それゆえ、朝日社説は「国民の意識との間に大きなズレがある」と指摘するのだ。