民進党が分裂し、希望の党の迷走が伝えられるなか、市場関係者は衆院選の行方とその影響をどう予測しているのか。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは、「与党勝利」にはコンセンサスがあるが、その「勝ち方」によって株や為替の動向は変わってくると分析する。消費増税が実施された場合の影響も含め、年末までの日本経済の見通しは――。

日経平均が選挙前に上がった理由

安倍首相は9月25日、臨時国会(9月28日召集)の冒頭で、衆議院を解散すると表明した。これにより、衆議院選挙の日程は、10月10日の公示、10月22日の投開票となり、国内株式市場の関心は、一気に選挙へ向かった。安倍首相は今回の解散を、「国難突破解散」と位置づけ、「人づくり改革」に2兆円規模を投入し、憲法9条に自衛隊を明記する改憲を公約に盛り込んだ。

なお、7月16日から施行された公職選挙法の改正規定により、小選挙区選出議員の定数は295人から289人へ減少し、比例代表選出議員の定数は180人から176人へ減少する。そのため、衆議院全体の議席は、475議席から465議席へ減少することになる。安倍首相は、勝敗ラインは「与党で過半数」とし、233議席の獲得を目標に掲げた。9月25日時点で衆議院における与党の議席数は322議席であるため(図表1)、与党が今回の選挙で90議席を失えば、過半数割れで敗北ということになる。

一方、野党で大きな動きがみられた。小池東京都知事が9月25日、国政政党の「希望の党」を立ち上げ、代表就任を表明すると、民進党の前原代表は9月28日、小池新党への合流をめざす方針を明らかにした。しかしながら、ここで問題が生じた。小池氏が、民進党の受け入れを巡り、憲法改正や安全保障関連法案への態度で候補者を選別する「排除の理論」を鮮明にしたため、護憲派も多い民進党内に反発の声が広がった。

こうしたなか、民進党の枝野代表代行は10月2日、新党「立憲民主党」の立ち上げを表明。これにより、民進党議員は、小池新党、立憲民主党、無所属、いずれかで出馬することになる。結局、希望の党の登場により、民進党が分断された格好になった。そして、衆議院総選挙は、(1)「自民・公明」、(2)「希望・維新」、(3)「立憲民主・共産・社民」の3極で争うことになる。