これら一連の流れを受け、市場では、希望の党はあまり議席を獲得できず、与党もそれほど議席を失うことはないのではないか、との見方が浮上している。仮にそのような結果となれば、アベノミクスの枠組みは変わらず、緩和的な金融政策と景気刺激的な財政政策が、しばらく続くことになる。日経平均株価は足元で堅調に推移しているが、このような選挙に絡む思惑が、一部影響した可能性がある。

希望の党は10月3日、衆議院選挙の第1次公認候補192人(小選挙区候補191人、比例代表候補1人)を発表したが、民進党からの合流組が約110人含まれている。このように、(1)最終的な公認候補の多くが民進党出身者となる可能性があること、また、(2)憲法改正や安全保障関連法案についての立場は与党とあまり変わらないこと、が希望の党の躍進を妨げる要因とみる向きもある。

また、野党の勢力結集が不発に終わり、衆議院選挙が3極の争いになったことで、政権批判票の受け皿が分散し、与党には追い風になったという声も聞かれる。もちろん、選挙情勢は今後も大きく変わる可能性があり、予断を許さない状況にある。それを踏まえた上で、想定され得る選挙結果をいくつかのシナリオに分け、相場がどのように反応するかを考えてみたい。

選挙結果のシナリオ別・相場見通し

その前に、ここまでの日経平均株価の動きを簡単に整理しておこう(図表2)。6月6日に寄稿したレポート「“日経平均2万円台”まだ安心できない理由」では、日経平均株価が2万円台を回復して定着するには、(1)トランプ政策の日本企業への影響を見極めること、(2)米国の底堅い成長と利上げ見通しを背景にドル円相場がドル高・円安方向で安定すること、が必要と述べた。また、この先3カ月程度で、(1)と(2)は、ある程度の見極めができるようになるため、本格的な2万円台の定着は、10~12月期頃と予想した。

実際のところ、米通商政策に目立った動きはなく、また、米景気対策は遅れているものの、米国経済が底堅く推移しているため、トランプ政策の日本企業に対するマイナスの影響は限定されている。また、足元のドル円相場も、1ドル=109円台をつけていた6月6日よりも、ドル高・円安水準にある。このように、前述の2条件がそろったため、2万円台を回復し、さらに上昇を続けている現状の日経平均株価の動きに違和感はない。