衆院選は最終盤を迎えた。テレビや新聞では、自民の堅調と希望の党の失速を強調している。だが1票を投じる参考材料となる情報は乏しい。投票先をなにで判断すればいいのか。そのとき各党の「公約」が参考になる。ただし正面から読んではいけない。各党の「うそつき集」から、本音を読み解く方法を紹介しよう――。

「退化」した公約の使い道

今回の衆院選で各党が出した公約を読むと、「悪い意味で民主党の失敗を教訓にしている」という感想をもつ。

民主党は2009年の衆院選で政権を奪取した。その時の主役は、鳩山由紀夫代表ではなく、政権交代時に実行する政権公約「マニフェスト」だった。

自民党の衆議院選挙公約の表紙。「この国を、守り抜く。」と書かれている。

当時の民主党マニフェストは、子ども手当、農業の戸別補償、高速道路の無料化などの政策を期限付きで実行するという工程表を示し、その財源も明らかにしていた。有権者は「数値、財源、期限」つきの具体的な政策が並ぶマニフェストを信頼し、政権交代が実現した。

だがご案内の通り、大部分のマニフェストを実効することなく、民主党は下野した。財源の計算があまりにいいかげんだったことに加え、官僚の協力を十分に得られなかったことが要因だ。この結果、マニフェストは「うそつき集」など呼ばれるようになった。

「マニフェスト」は公明と維新だけ

この「反省」に立てば、より精緻で実現可能な政策を練り上げるのが本来の姿だが、残念ながらそうはなっていない。民主党のマニフェストは具体的な約束だったため、約束が果たせなかったことがはっきりしてしまった。逆に、あいまいな表現にとどめておけば、傷は浅い。各党が示し合わせたわけではないだろうが、公約をみると具体的な数値が減っていることがわかる。つまり公約は「退化」したのだ。

主要8党のうち今回の衆院選で「マニフェスト」という名を使っているのは公明党と日本維新の会だけ。自民党は政権公約、希望の党と立憲民主党は政策パンフレット、共産党は総選挙政策、社民党が選挙公約、日本のこころは重点政策としている。ここからも「マニフェスト離れ」が進んでいることがうかがえる。

退化した公約なら読んでも意味がない、と思うかもしれないが、必ずしもそうではない。各党別に「見どころ」をガイドしてみたい。