「しがらみ」を打破する知恵と執念

日本酒好きで「獺祭(だっさい)」を知らない人はいないでしょう。純米大吟醸酒として日本一の出荷量を誇り、海外にも輸出されて人気を博しています。獺祭を生み出したのは、旭酒造会長の桜井博志氏。3代目社長を継いだ1984年にはほぼ倒産状態だったという山口県の零細酒蔵を再建し、日本酒のグローバルブランドを築きました。

その背景には、「徹底的においしい酒を造ろう」という桜井氏の熱い思いと、そのために日本酒業界のさまざまな「しがらみ」を打破するための知恵と執念がありました。従来、仕込みや醸造などのプロセスは、杜氏の暗黙知頼みで冬場にのみ行われてきました。そのプロセスをコンピュータで制御することにより、通年での酒造りを可能にし、誰が作業しても品質を維持できるよう、技術の標準化を行いました。