管理不全でマンションが朽ちていく

東京オリンピック終了後、マンション価格が暴落するのではないかという「2020年問題」が不動産業界から聞こえてくる。東京での五輪開催が決定した13年以降、都心のマンション販売は盛況で、優良な収益物件には海外からの投資も集まった。しかし祭りの後は投資も萎む。キャピタルゲイン狙いで投資物件が20年までに大量売却されれば、需給バランスは一気に崩れる。一方で東京都の人口は25年にピークを迎えて、首都東京でさえ人口減時代に突入する。人口減によって住宅需要が落ち込んでいく課題はもちろんのこと、人口減に高齢化が相まって強く懸念されているのは「管理不全マンション」が増えることだ。

管理不全マンションとは管理組合がなかったり、管理組合が機能しないために、維持・管理や修繕が行き届かないマンションのことをいう。管理組合とは分譲マンションを購入した住民(区分所有者)で構成される団体だ。マンション内のルールを決めたり、管理費や修繕費を徴収したりしてエントランス、廊下、エレベーター、外壁、配管など共用部分を管理維持し、修繕や改修のタイミングを適宜決めていく。ところが昨今は管理組合がないマンションや住民の高齢化によって役員のなり手不足に悩む管理組合が非常に多い。また住民の高齢化や空室の増加は管理費や修繕積立金の滞納、修繕資金不足という事態も招く。結果、組合が機能しないために老朽化しても修繕が適切になされず、共有スペースのメンテナンスもままならない管理不全マンションが全国で増加しているのだ。管理不全マンションは経年劣化による老朽化が著しく、スラム化につながりかねない。スラム化して治安や環境衛生が悪化すれば、マンションの資産価値はさらに下落する。マンション2020年問題は単にポストオリンピックの問題ではない。高齢化、人口減時代に突入した日本に突きつけられた課題の一端として捉えるべきだろう。

マンションの管理組合は機能しているのか。(写真=時事通信フォト)

住民の高齢化や空室増が管理組合の機能不全を引き起こすのは前述の通りだが、管理組合という組織自体が抱えている問題もある。管理組合そのものに意思決定する仕掛けがないのだ。08年の建築基準法改正で竣工・外壁改修等から10年を経たごとにマンションの外壁の全面打診検査が義務づけられたが、外壁塗装などのマンションの大規模修繕は一定の周期で必要になる。築年数によっては耐震基準に満たない、などの理由で建て替えを要する場合も出てくる。住民の当事者意識が高く、管理組合が機能しているマンションなら話は比較的スムーズに運ぶ。しかし管理組合がいくら修繕や建て替えを呼びかけても、意思決定機関である総会で反対派が多数を占めたり、総会に出席する人数がまばらだったりして、合意が得られないケースは少なくない。修繕積立金の不足分の徴収など、お金の段になると反対や文句を言い出す人もいて、なかなか前に進まない。