小手先の人事で国民の不信を払拭できるのか
8月3日、第3次安倍第3次改造内閣がスタートした。新内閣発足時の記者会見の冒頭、「国民から大きな不信を招く結果になったことについては深く反省しおわびしたい」と首相自ら語ったように、今回の内閣改造はある意味で地獄に落ちた安倍晋三首相が復活を図るための改造と言えるだろう。支持率急落の原因になった森友学園と加計学園問題の震源地は明らかに安倍首相本人および首相夫人だ。にもかかわらず、「知らぬ存ぜぬ」で押し通してきたことが国民の不信を招いたのである。
たとえば加計学園が国家戦略特区に獣医学部の新設を申請していることについて、安倍首相は「(加計学園の申請が国家戦略特区諮問会議で正式決定した)2017年1月20日まで知らなかった」と国会で答弁した。首相は加計学園理事長の加計孝太郎氏を「腹心の友」と呼び、16年中にはゴルフだけで7回一緒にラウンドしている。加計学園は構造改革特区の時代から獣医学部の新設を申請してきたし、国家戦略特区諮問会議の議長はほかならぬ安倍首相である。
「1月20日まで知らなかった」との答弁は違和感がすぎる。私は私学の経営者だから、文部科学大臣に会うのがどれほど大変か、よく知っている。担当課長から始まって縦横斜めに面会理由を聞かれて、局長やら何やらと手順を踏んでようやく面会できるのだ。加計理事長は16年の8~9月にかけて農水大臣、文科大臣、地方創生大臣に立て続けに面会している。これも普通では考えられない。首相当人の指示があったのか、「官邸の最高レベル」に対する忖度が働いたのかは不明だが、首相以下、このようなウソを平然とつく政府に国民が不信感、不快感を抱くのは当然のことだ。
安倍政権の人事は「お友達か、稲田(朋美元防衛大臣)さんや高市(早苗前総務大臣)さんのように同じ思想を持っているか、イエスマンかの3パターンしかない」という自民党の村上誠一郎議員の指摘は正しい。今回の改造ではトラブルメーカーだったお友達やイエスマンのクビを一部すげ替えて、安倍首相と距離のある河野太郎氏を外務大臣に、野田聖子氏を総務大臣に抜擢した。こんな小手先の人事で自らを震源地とする国民の不信が払拭できると考えているとしたら、国民をなめている。
「結果本意の仕事人内閣」を自負する安倍首相は経済を最優先課題に掲げている。しかし、経済閣僚である財務大臣や経産大臣は留任。日銀総裁も代わらない。4年8カ月のアベノミクスで何の成果も残せなかったメンバーのままで、「経済優先」と胸を張る神経が理解できない。