健全野党の座を共産党に奪われる始末

アベノミクスのまやかしが白日の下にさらされ、活発なわりに外交成果は乏しく、悲願の憲法改正も立ち往生。今度の内閣改造も上積みは期待できそうにない。それでも「代わりがいないのだから、安倍さんにやってもらうしかない」という議論はついてまわる。約5年も結果を出せないリーダーの代わりがいないというのだから、日本の政治はリーダーを生み出せない仕組みになっているとつくづく思う。

振り返れば、政権交代可能な二大政党制の実現を目指して1996年の衆院選から小選挙区制が導入された。あれが諸悪の根源で、私は当時から小選挙区制には大反対だった。最大の問題点はオセロのように白か黒かで決まるために雪崩現象が起きやすいことだ。「都民ファーストの会」が圧勝した先の東京都議選のように、ブームになれば一気に黒から白、白から黒にひっくり返る。スイングの幅が大きすぎるのだ。政策の中身を吟味するよりも時の勢いで選ばれやすいから、長期的な国家ビジョンを持ったリーダーはなかなか出てこない。小選挙区制では選挙区当たりの平均有権者数が約35万人。市長選レベルだ。市長選レベルの小さな選挙区から出てくると、どうしても地元への利益誘導が政治活動の中心になる。天下国家を論じ、外交、防衛、経済といった日本の長期的な課題に国政レベルで向き合う政治家がすっかり少なくなった。

確かに小選挙区制導入の目的である政権交代は果たした。しかし、中選挙区制でも細川連立内閣が生まれているわけで政権交代は起こっている。また「コンクリートから人へ」とスローガンを掲げた民主党も政権を取ったが「日本をこうしよう」というまとまった国家観はなく、七夕の短冊のようにランダムに思いついたマニフェストしか持ち合わせていなかった。結局、その目玉であった八ッ場ダムの中止もできず、民主党政権の約3年間では内政外交ともにめぼしい成果はなし。同情するとしたら東日本大震災に見舞われたことだが、その危機対応も強い批判にさらされ、「民主党政権はもう懲り懲り」というすさまじい逆風の中で政権を明け渡した。

その後も野党第一党の存在感を示せずに党勢は萎むばかり。昨年には民進党に改名、知名度の高い蓮舫氏を代表に選出して巻き返しを図るも、二重国籍問題で完全に裏目に出た。ウソつきを代表に選ぶような党に国民の信頼が集まるわけがない。私は蓮舫氏を代表に選んだ瞬間に民進党の使命は完全に終わったと思っている。従って蓮舫氏が代表を辞任した後の民進党代表選挙には、さほど興味はない。

「八ッ場ダムの中止」ができなかった前原誠司元国土交通相と「コンクリートから人へ」のスローガン男・枝野幸男元官房長官の2人が立候補して、マスコミ的に言えば党内保守派とリベラル派の一騎打ちという構図だが、どちらが新代表になっても民進党に未来はないだろう。すでに四分五裂の状態で、先に沈没船から逃げ出した長島昭久氏や細野豪志氏などは小池百合子都知事との連携を模索しているようだ。しかし小池都知事と「都民ファースト」のブームに乗っかる程度の腹づもりなら、やめておいたほうがいいと忠告しておこう。国民が求めているのは政権交代ではなく自民党の腐敗と奢りを正す健全野党だ。その役割を共産党の小池晃書記局長1人に奪われているような野党第一党の党首に誰がなるか、など国民は全く興味がないのだ。

(構成=小川 剛 写真=AFLO)
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