「ABCマート ららぽーとTOKYO-BAY南館店」の朝礼は営業開始の20分前に始まる。その日の出席者は13名。広報の山田卓也氏も販売サポートで参加している。同社では社長、役員、管理部門の社員も全員、時間を割いて販売をサポートすることになっている。朝礼の内容は次の通り。
(1)前日の営業報告(2)当日の売り上げ目標金額の発表。店舗および各個人の目標も発表する(3)前日、客が欲しいと思ったが欠品していた商品(サイズ、色)の説明(4)当日のおすすめ商品の紹介(5)業務連絡(6)ABCマートの接客3原則の唱和
発言する者はテンポよく数字を発表し、参加者は全員、真剣にメモを取る。朝礼のなかで独特なのが(3)と(4)だろう。
「客の要望に応えられなかった商品」と「おすすめ商品」については、全員で現物を前にして、特徴を頭に叩き込む。
店長の福戸輝明氏はこう説明する。
「朝礼では業務連絡と商品知識を共有するのが目的です。数字や靴のデザイン、機能の話が中心になります。そして最後に、私がみんなの気持ちを高めるためのスピーチをします。よし、今日も一日、頑張ろうと、元気が出る話をする。ABCマートの特徴は元気で明るい接客ですから」
同店には4000種3万足という膨大な商品が置いてある。それでも福戸店長は「お客様がどの商品を手に取ってもちゃんと説明できます」という。「自分で商品を履いてみて、触って、お客様に説明するうちに覚えてしまいます」と胸を張る。
ABCマートが不況のなかでも売り上げを伸ばしているのは朝礼を見ていればわかる。接客の重視、商品知識の徹底、風通しのいい社風……。会社の強い体質づくりにはいずれの要素も不可欠だろう。
(尾関裕士=撮影)