日本人は年に平均、3足の靴を買うという。意外に靴のマーケットは大きいのだ。そんな靴の業界で業績を伸ばしているのがABCマートだ。2010年2月期の連結純利益は前年比31%増の144億円(売り上げ1135.7億円)。しかも7期連続の増収増益である。店舗数は全国で523店にのぼる。

各担当者の報告に、スタッフが「ハイ!ハイ!」とテンポよく返事をする。活気あふれる光景だ。

各担当者の報告に、スタッフが「ハイ!ハイ!」とテンポよく返事をする。活気あふれる光景だ。

私が朝礼を見学した「ららぽーとTOKYO-BAY南館店」は売り場面積が通常の店舗の倍近くあり、休日は老若男女でいっぱいになる。

店長の福戸輝明氏は「私たちの一番の仕事は販売です」と断言する。

「うちではレジ担当も在庫の担当も、自分の売り上げ目標を持っている。全員が必ず接客をします。ですから朝礼も販売に結びつけるためのサポート業務なのです」

ABCマートでは、社長以下、役員も広報も経理の人間もみな時間をやりくりして店舗へ行く。社員全員が販売現場で商品知識を獲得し、接客技術を磨くのだ。ゆえにセクショナリズムに陥ることがなく社内の風通しもいい。

広報の山田卓也氏は朝礼の特徴は「目標数字を自覚することと、商品知識を徹底することにある」と言う。

確かに朝礼を見ていると、新商品の品番や色について説明するだけでなく、必ず現物を掲げながら、セールストークを紹介する。たとえば「この紳士靴は表面にガラス加工がされてあり、雨の日にも履けます。その点をお客様に説明すると購入していただけることが多い」などと、かなり親切に売り方を教える。

山田氏によれば「特定の靴を買いに店に来るお客様は少ない」とのこと。

「だから接客が重要なのです。気に入った商品のサイズがない場合は、必ず似た商品をお勧めし、ニーズを取りこぼさないようにします」。

ABCマートの力とは、接客と貪欲なまでの販売志向にある。

(尾関裕士=撮影)