日産栃木工場の敷地面積は292万平方メートル。東京ディズニーランドの5.7倍もの広さだ。そこで約6000人の従業員が24時間体制で働いている。

各部署の朝礼以外に、月初には工場長の「月頭放送」がある。交代勤務のため、モニターを通して好きなときに見られる。

各部署の朝礼以外に、月初には工場長の「月頭放送」がある。交代勤務のため、モニターを通して好きなときに見られる。

私が見学した朝礼はいくつもある生産工程のうち、アルミ鋳造と、機械の点検、修理を行う保全の現場である。どちらのセクションも交代制勤務なので、朝礼は朝、夕方の2回に分かれる。

主にエンジン部品のアルミ鋳造を担当する第三鋳造課の朝礼は毎朝8時からだ。工場建屋に付属する事務所に、制服に身を包んだ24名が集まる。課を束ねる西井清一課長は朝礼の意義についてこう語る。

「ポイントは3つ。品質の向上、コストの削減、安全の徹底です。全員が意識を共有するために毎朝、集まります」

15分ほどの朝礼ではその3つが常に語られる。連絡事項が終わると、次がコスト削減についての提案だ。その際、ひとりひとりが経営者になったつもりでプランを考える。その手法を日産では「コンビニ経営」と呼ぶ。工場長の高岡洋海氏は次のように解説する。

「工長は(コンビニの)店長で、作業者は店員のようなもの。そして、いかに早いリードタイムで売りにつなげるか、いかに少量の在庫で運営するかを各人が考えるしくみがコンビニ経営」

要は、コンビニのように小回りをきかせて在庫を減らし、コストの削減に結びつけようということだ。自動車業界は国内メーカーに新興国メーカーも加わって熾烈な競争を繰り広げている。朝礼で気を引き締めて、コスト削減を徹底しなければならないのだろう。

安全については最後に全員で「私の安全宣言」を唱和する。唱えるだけでなく、参加者は右手の人差し指を前に出し「指さし確認」の姿勢になる。そうして、「今日もゼロ災(害)でいこう」と声を張り上げる。日産の生産現場における朝礼は目的意識が明確なそれだった。

(松田健一=撮影)