国内で流通している宅配便は約32億個。佐川急便はうち10億個強を扱っており、1位のヤマト運輸と市場を分け合っている。佐川急便の連結売上高は8872億円、従業員総数は5万8614人(ともに09年3月期)。巨大な総合物流企業である。

60人ほどの出席者全員が青の作業服姿で足元は運動靴、ズボンの後ろポケットには軍手を突っ込んでいる。皆、背筋がすっと伸びている。

60人ほどの出席者全員が青の作業服姿で足元は運動靴、ズボンの後ろポケットには軍手を突っ込んでいる。皆、背筋がすっと伸びている。

同社には荷物の積み降ろしや法人顧客向けの物流サービスを行う拠点が全国に358あり、そこでは年中無休で早朝から朝礼が行われている。思えば大晦日や元日も荷物は動いているわけだから、物流会社に休みはないのだ。

拠点での朝礼は2種類あり、午前7時から行われるのが管理職の朝礼で、7時30分過ぎから始まるのがドライバーたちの朝礼だ。私が見学した東京の城南店は港区全体を担当する拠点で、年間に5000万個の荷物を集め、1500万個を配達する有数の規模である。

管理職朝礼は店長、課長、係長がワンフロアに集まって行われる。

「ウォッス、ウォッス、ウォッス……」

朝礼が始まったとたん、大声が響き渡った。あいさつを兼ねた、朝の気合入れ10連発である。野太い声で気合を浴びせられ、私は気押されてしまった。何も悪いことをしたわけではないのに、怒られた気がした。

気合入れに続いて、「黙祷」という合図とともに全員が1分間、静かに頭を垂れた。1957年の創業以来、人身事故で亡くなったドライバーや事故被害者を悼むために必ず行っている。人の命を悼むだけでなく、安全に対する誓いを新たにしているのだ。

その後社是、貨物取扱5原則の唱和があり、業務連絡、最後に店長の訓示がある。長谷川博文店長は語る。

「朝礼では、事故を起こさないこと、お客様との約束を守ること、そして目標を達成することを強調しています」

この長谷川店長のスピーチが、声といい内容といい、名調子なのだが、それは次回に。

(尾関裕士=撮影)