弘兼憲史の着眼点

▼「サプリメント」を日本で広めた立役者

終始柔和だった池森さんの表情が変わったのは、対談終盤にこう尋ねたときのことでした。

弘兼「後継者をどう育成するつもりですか?」
池森「経営層を育成する『池森塾』で定期的に私の考えを社員に伝えます」

「ファンケルはサプリメントという言葉を日本で最初に使ったメーカー。でも今、売り上げはサントリー、DHCに追い抜かれています。その理由は……」

池森さんは私の質問を遮って「悔しいですよ」と言いました。

「何とかしたいと思っています。その目処をつけてから引退しないと」

そう、冗談めかして付け加えました。

池森さんは自分の後継者には次の条件を考えているそうです。

(1)価値観の面で私と相性が合っている
(2)その人の力量がわかる程度の期間、会社に勤めていること
(3)「できる人(才のある人)」であり「できた人(徳のある人)」であること(徳を重視)
(4)人望のある人、すなわち社内で評判のいい人
(5)複数の帽子をかぶれる人(会社全体のことを考えられる人)

特に(3)から(5)は、私が「島耕作」シリーズで書いていることと同じ、でした。

弘兼憲史(ひろかね・けんし)
1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)勤務を経て、74年に『風薫る』で漫画家デビュー。85年『人間交差点』で第30回小学館漫画賞、91年『課長島耕作』で第15回講談社漫画賞、2003年『黄昏流星群』で日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年紫綬褒章受章。
(構成=田崎健太 撮影=大槻純一)
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