13年3月期、ファンケルは創業以来はじめて純利益約21億円の赤字を計上。業績不振を受けて、池森は13年1月、75歳で8年ぶりに経営へと復帰。以後、売上高は15年3月期776億円から16年3月期908億円と増収。一方、15年4月から広告宣伝費を積極的に投入したことで営業利益は40億円から12億円へと7割減益した。
【弘兼】経営から退いていても業績が落ちているのは耳に入りますよね。
【池森】まずいと思ったのは、優秀な研究員が辞めはじめているというのを聞いたときでした。社員のモチベーションが落ちていたのです。
【弘兼】その原因は何でしょうか?
【池森】中長期的視野がなかったために、自然派を謳う競合品が増えたり、異業種が市場に入ってきたりする中で「無添加といえばファンケル」という優位性が揺らぎはじめていました。そこでイメージ刷新を行いました。しかし容器を白やシルバーを基調とした洗練した印象に見えるものに変えてみたものの、英語で表記された商品名が小さくて読みにくくなった。ファンケルの顧客は50代以上の人も多い。お客様が選びにくい、わかりにくく、自分たちがつくりたいものをつくってしまった。これが私が経営に戻ろうと決心するきっかけになりました。
【弘兼】1度身を引いてしまったので、戻りにくくはありませんでしたか?
【池森】やはり、みっともないと思いましたよ。経営を後任者に託した身としては、見ているしかないのですが、会社が潰れてしまうのはもったいないと悶々としていました。12年暮れに当時の社長から私に戻ってほしいという要請があり、自分がやるしかないと決断したのです。