「ファンケルが身売りした」──2019年8月に発表されたキリンHDとの資本業務提携は、創業者による自社売却の動きかと注目された。化粧品、サプリメントともに好調な時期に、キリンHDの持分法適用会社となることへの違和感だ。今回の提携を発案した池森賢二会長の真意を聞いた。

2003年に経営の第一線から退いたが、13年に復帰

企業にとって、サステナビリティはいまや社会的責任の一部となった。顧客、株主、社員などのステークホルダーがいるかぎり、企業は存続に努めなければならない。

ファンケル会長 池森賢二氏

次期社長の人選は、トップの最重要課題といわれてきた。1つの判断ミスから倒産しかねない「VUCA(ブーカ)の時代」は、その重要性がますます高まっている。

いったん会長に退いたカリスマ経営者が、業績不振から復帰したケースはいくつもある。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長、エイチ・アイ・エスの澤田秀雄会長兼社長、メルカリの山田進太郎CEO(社長)……各社の事情は異なるものの、“社長復帰”からの経営再建が目立つ。

ファンケルの池森賢二会長もその1人。

自ら社長の65歳定年を決めて2003年に第一線を退いたが、会社は業績不振に陥り、経営再建のために復帰。創業者ならではの“大鉈”を振るい、大胆な戦略転換によって一気に業績をV字回復させた。

19年8月にキリンHDと資本業務提携を結んだのも池森会長の発案だ。ZOZO、LINEなど、M&Aによる事業継承が注目を集めるなか、池森会長が創業者として選択した“生き残り戦略”について語ってもらった。