キリンに持ちかけた3つの理由
過去に大手外資を含む数社から提携のお話をいただき、なかには時価総額の2倍という好条件もありました。しかし価格を競わせるようなことはしたくなかった。自分が起業して育てた会社の将来に、最善の道を求めるのは創業者の義務でしょう。
そこで自分自身で候補となる企業を研究し、最終的にキリンHDがいいと判断しました。第1に当社とバッティングする事業がない、第2に同社と07年に提携した協和発酵工業(現・協和キリン)は、その後も企業風土や独立性が尊重されている、第3に私が「一番搾り」が好き、というのが主な理由です。まぁ、3番目は半分冗談ですけど。
私からキリンHDに持ちかけたのですから、社員たちが安心し納得してくれるか心配でした。しかし社員の大多数は、「池森さんが社員のことを真剣に考えてくれた決断だ」と理解してくれました。この提携を通して、ファンケルらしさや当社の品格が将来も保っていけたら、創業者としてこれほどうれしいことはありません。
(構成=伊田欣司 撮影=石橋素幸、鈴木啓介 写真=時事通信フォト)