あるときは大河ドラマで武将を演じ、あるときは武道館で熱唱する。原点はデビュー以来持ち続ける「体制」への反発にあった。愛読書は中国古典というロッカーの素顔とは。
「40くらいで人生折り返し、なんてよく言うけど、スゴロクじゃあるまいし、折り返してどうするんだよって思うんですよ」――都内事務所の一室。頭にタオルを巻いたラフな姿ながら、ソファに浅く腰かけた、長身でがっしりと肩幅の広い体躯。44歳になっても変わらぬ存在感は、紛れもなく歌手・吉川晃司その人だ。
「重心を低くキープできるようになったというか、打たれ強くなった。怖いものがなくなりましたね」
とは言うものの、インタビュー中に何度も長い脚を組み替える。「昔っから落ち着きがないって言われて」と苦笑し、「うまくしゃべれないんですよね、俺……」と呟き、考え込んだ。
広島の進学校を中退し、大手芸能プロから18歳でデビュー。一気に花を咲かせた。しかし、「王道を行け」と言う周囲に反発し、「ホンモノは路地裏にある」と22歳で独立した。
「人が離れていった。あれ? 仲良かったのに、どうしたんだ? って」
ギタリスト・布袋寅泰とのユニットも2年で消滅。暗中模索が続き、走っても前に進まなくなった。
33歳のとき、所属会社と離別。
「ほとんど何も残らなかった。心身が壊れた。すべてを恨みましたよ」
話す吉川も、視線を落としがちだ。
どちらに歩き出せばいいかわからない。が、突っ張ってきた手前、素直に人に教えを乞うことができない。
そんなとき、中国古典に出会った。