水谷豊、及川光博の2人が主演する刑事ドラマ『相棒』シーズン9(テレビ朝日)が絶好調だ。最高視聴率は20%を突破し、2010年10月期の新作ドラマの中でもダントツ。映画第2弾『相棒-劇場版II-警視庁占拠!特命係の一番長い夜』も公開され、大ヒットした第1弾をしのぐできばえと評判も上々だ。
警視庁の「陸の孤島」と呼ばれる「特命係」。東京大学法学部卒のキャリア組だが、疑問があれば組織の命にも従わず、しかも、切れすぎる頭脳を持つ変わり者の警部・杉下右京とその相棒の警部補・神戸尊が主人公だ。
『相棒』の面白さは右京の突出した能力により、難事件の謎が見事に解明されていくプロセスにある。何の権限も与えられず、組織の後ろ盾もないのに、知覚力、洞察力、仮説力、実行力だけで成果を導く。右京の「謎解きの発想術」から、われわれは多くの仕事術を学ぶことができる。『相棒』はまさに「ビジネスの教科書」なのだ。例を示そう。
「ないものねだり」の知覚力
右京は鋭い観察力を発揮し、人が見つけられない手がかりを見つけ出す。その観察力を生み出すのが「ないものねだり」の発想だ。あるはずなのにない、ないはずなのにあるものを見つけると、そこに必ず手がかりがある。犯罪はどこかにほころびがあるからだ。
「ないものねだり」の発想はマーケティングの基本でもある。仮に右京が企画マンになり、活け花教室を訪ねたとする。何を感じるだろうか。ここには男の生徒がいない。これを手がかりにして事業プランを立てる。実際、男性用活け花教室は今流行っている。われわれは目にした光景に何の疑問も抱かず、鵜呑みにするが、「ないものねだり」の発想を習慣づければ、未開拓の市場やニッチビジネスを思いつくはずだ。