情報の「分母」を変える仮説力
情報には「分子」と「分母」がある。例えば、「寒い」という分子の情報に対し、分母が「冬」か「夏」かで意味が変わる。事件捜査でも、同じ分子の情報に対して分母を変えると手がかりの意味が変わり、謎が解ける。右京の仮説づくりの特徴的な方法だ。
犯人に「完全なアリバイ」があったとする。それは情報の分母である犯行現場がA地点だった場合だ。ここで分母を変え、B地点だったとするとアリバイは崩れる。その手がかりを探し、証明するといったやり方だ。
分母を変える発想はビジネスでも重要だ。例えば、「完売」は分母が売り手だと廃棄損失ゼロで「儲かった」になる。しかし、分母を買い手に変えると「ほしい商品が買えない店」と意味が変わり、機会損失が生じていることになる。われわれは常に分母を売り手から買い手に変え、仮説を立てる発想力を持たなければならない。
『相棒』ではこうした数々の発想術を駆使し、最後まであきらめず、事件を解決していく。右京を演じる水谷豊氏によると、「大切なのは頭のよさではなく、頭の強さではないか」という。以下は本人のインタビューだ。
水谷「一つのことをどこまで考え続けることができるか。ふと気がつくと考えていて、最後まで思い続ける。頭のよい人はいても、頭の強い人は意外と少ないものです。右京も頭が強いのでしょう。ビジネスの世界でも素晴らしい仕事ができる人は、世間の常識やまわりの雑音に惑わされずに一つのことを考え、思い続けるからではないでしょうか」
──「頭の強さ」は特別なものでしょうか?
水谷「思うのはお金もかかりませんし、思えばいいだけですから、誰もが持っている才能でしょう。ただ、多くの人は途中で妥協して止まってしまい、自分の頭の強さを意識できていない。右京はその妥協がないのです」
既存の常識や雑音に惑わされず、徹底して思い続けると、問題解決のための発想が浮かぶ。最後は頭のよさではなく、頭の強い人間が勝つ。天才・右京から最も学ぶべきは、そんな妥協なき仕事術なのだろう。
※すべて雑誌掲載当時
◎テレビ朝日「相棒」
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◎「相棒-劇場版II-」
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