「利用履歴が残っている、金を払え!」

あるテレビのスタッフのもとに架空請求のメールが届いた。

スタッフから、そのメールに書いてある電話番号に連絡をしているシーンを撮影したいと言われた。業者の実態を暴くことには慣れている。快諾して、私はその番号に電話をかけてみた。

業者の男は「あなたには、動画サイトの運営会社に対しての未納料金が発生している」と言ってきた。私が「そんなアダルトサイトを見た覚えがない」と言っても、利用履歴が残っているので、払わなければならないというのだ。

当連載が本になりました!『ワルに学ぶ黒すぎる交渉術』(多田文明著・プレジデント社)。大好評発売中です。

アダルトサイトを見たといって、架空の請求をされて被害に遭うケースは相変わらず多い。最近は女性が気軽にHなサイトを覗こうとしてトラブルに巻き込まれることも少なくない。

架空請求以外にも、スマートフォンなどで芸能人のゴシップネタなどの動画サイトを見ようとクリックすると、いきなりアダルトサイトへつながり、利用料金として数十万円を払えといった表示がでる仕掛けのものもある。

しかも、請求画面のどこを押しても表示は消えず、時間のカウントダウンまで始まっている。それを見て慌てた人は、サイトに書いてある電話番号にかけてしまい、お金を払うように要求される。

私は「この手口は詐欺」とわかっているが、あえて男の話にのってみた。よくよく相手の話を聞くと、今、話しているのは、料金未納が発生しているという直接の運営会社ではなく、運営会社から依頼を受けて料金請求をしているサポートセンターだという。そして次のような提案をする。

「本来、30万円の利用料金になりますが、今日中に払う約束をすれば、交渉して15万円にできます」

あくまでもサポートセンターは、サイトの未納料金が発生する運営会社とは別物の業者なので、仲介役として交渉することで、15万円に減額できるというのだ。