「うちの子は何をやらせても続かなくて」と嘆く親
「うちの子は何をやらせても続かなくて……。先生、どうしたらいいでしょうか」
父兄面談でよくされる相談です。「うちの子は集中力、持続力がない」または「目標がない、無気力」と思っている親御さんは少なくないようです。
一方で、寝食を忘れるほど何かに没頭する子供もいます。この差は、一体どこから生まれてくるのか。たまたまの素質によるものなのか、家庭教育に因るものなのか。本稿では、この謎について教師と親の視点から探っていきます。我が子を「没頭する子供」に育てている親の特徴を5つ挙げていきましょう。
我が子を「没頭する子供」に育てる親の特徴1
○「やりたいことがない」「夢や目標がない」子供を受け入れる
「夢や目標、夢中になれるものがないとダメだ」
大人の側が、このようにまるで強迫観念的に思い込んでいることがあります。子供は小さい頃、将来の夢が言えたのに、小学校に上がり、高学年、中学生へと成長するにつれて、「将来の夢がない」というケースが増えてきます。これは、ある意味自然なことです。
小さい頃は、自分の能力についても知らないし、認識している世界も狭いです。身近な大好きなもの、素敵だと思うものに「自分もなりたい」と思います(だから、将来の夢に「カブトムシ」と本気で書きます)。
しかし、大きくなるにつれて智恵もつき、様々なことを認識しはじめます。自分の知らない広い世界があることに気付いてくるのです。ソクラテスのいう「無知の知」です。自分は今、知らない、できないことが多い、ということを自覚するのは知的な進歩です。
広い世界を知って、何を選ぶべきかと迷う姿は自然です。心理学に「選択回避の法則」というものがあります。どういうものかというと、例えば次のような買い物の実験をしたとします。消費者は、ある商品が3種類程度棚に並んでいる時はどれかを選んで買うのに、100種類棚に並ぶと、買わなくなるそうです。
つまり、選択肢が多すぎると、選べなくなるのです。
将来の職業に絞っていうなら、江戸時代を考えてみてください。この時代、将来の職業は、一切の選択肢がなく決まっていました。職業は、原則すべて世襲です。こうなると迷う理由もなく、悩むこともありません。場合によっては、結婚相手すら決まっています。
今の時代は、職業選択の自由の社会であり、インターネットの発達も手伝って、見える選択肢がきわめてたくさんあります。というか多すぎるのです。よって子供が成長するに従って、かえって「将来の夢がない」と言うような状態に陥るのはおかしなことではありません。親の側が、まずその視点に立ちましょう。焦りは禁物です。
幼児の時代は、朝から夕暮まで公園の砂場でずっと穴を掘り続けたり、無心で虫を捕ったりという時間があったかもしれない我が子も、小学校高学年から思春期の頃に入ると、案外、没頭できるモノを見失い、ゲーム三昧ということになりがちです。でも、その没頭することがない時期は子供の模索の時期。親はじっと待つこと。その姿勢が大切です。