日本の家電業界と言えば、往年の輝きはすっかり消え失せ、衰退産業とみられている。しかし、実は今後、日本のメーカーがグローバルで業績を拡大していく見込みのある分野がある。エアコンなどの空調機器だ。
近年の温暖化による世界的な猛暑の発生などで、これまで空調があまり必要とされてこなかった地域でも需要が高まってきており、新興国も経済発展によって空調が普及しつつある。その上、欧米など先進国を中心に環境規制も強化されてきており、高い省エネ性能を誇る日本製のエアコンが注目されているのだ。
たとえば米国では、家全体を冷やすユニタリーエアコンが主流だが、部屋ごとの温度管理が難しく、効率も悪い。日本のインバータエアコンは、モーターの運転を細かく切り替えて電力消費を抑え、きめ細かい温度制御が可能なので快適性も高い。省エネ、性能の点で優位性がある。
日本の空調メーカーには、パナソニックや三菱電機のような総合家電メーカーと、ダイキン工業や富士通ゼネラルのような空調専業メーカーがある。三菱電機は空調冷熱を8つの成長牽引事業の一つと位置付け、国内販売トップシェアのパナソニックも成長分野とみて経営資源を投下している。専業メーカーのダイキンや富士通ゼネラルは、ポテンシャルはより高いとみるべきだろう。
一方、空調は比較的ローカルな家電だ。地域ごとに気象条件や販売網も違うため、進出するためには地元メーカーとの提携、協業が不可欠。そのための有効な手段がM&Aだ。
これに熱心なのがダイキンや三菱電機で、ダイキンは2012年に米国の空調大手を買収、今年も米換気装置大手のフランダース社を買収している。三菱電機も昨年、イタリアの業務用空調メーカー・デルクリマ社を過去最高の買収額となる6億6400万ユーロ(約902億円)で買収した。
(構成=衣谷 康)