為替の世界情勢は「不確実性が大きいことだけが確実」という状況が続いている。欧州は一旦落ちついているものの、英国のEU離脱(ブレグジット)投票のショックが懸念され、米国も大統領選の結果がわかるまで先行きが見えない。多発しているテロの問題もあり、政治、経済、地政学いずれの観点でも不確定要素が積み上がっている。

その中で、日本だけが参議院選挙で与党が大勝し、政治の安定性という点では相対的に際立っている。もともと円は金利が低く、キャリートレードの際は資金調達に使われるファンディング通貨。リスクオンの状況では売られるのが常だが、現在の「買う通貨不在」の世界情勢を見ると、消去法で円が残る。秋までは円高基調が続くと見ていいだろう。

国民投票でブレグジットが決まった6月24日には1ドル=99円まで円高が進んだが、現在は106円(7月22日現在)まで戻している。しかし私は、90円台中盤までは円高が進み、最高値で91円までいく可能性もあると見ている。日銀短観における2016年度の想定為替レートは111円台であることを考えると、日本企業へのダメージは小さくないだろう。

ただ、来年は円安基調に戻るだろう。その要因は大きく3つある。1つは人口減少と巨額の財政赤字。借金を圧縮するために取りうる政策は、基本的にはインフレ&低金利に誘導する金融抑圧だろう。そう考えれば、長期的には円安になっていく。2つめは原油価格の底打ち。ここ数年の世界景気の低迷は、原油安が根本的な要因の1つ。今年後半から構造的な需給が改善するはずで、原油価格も緩やかに上昇するはずだ。

最後は「米国の利上げ」だ。現在利上げは棚上げされているが、雇用状態も改善されつつあり、状況が落ち着けば再び利上げに向かうだろう。そうすればドル高円安にふれることになる。

(構成=衣谷 康)
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