わが家の家計に稲盛和夫なら何とアドバイスするだろうか――。経営者の勉強会「盛和塾」で直々に哲学を学んでいる2人のファイナンシャル・プランナーに徹底取材した。
Q. 「為替相場が円高に急転」というニュースが流れた。「すぐに対策を立てる」、それとも、「あわてず騒がず」、どう対応するか。
【ヒント】稲盛氏は、主に中小企業経営者が集まる盛和塾の勉強会で、好不況を「恵みの雨と冷たい嵐」に例えて、こんな話をするという。
「嵐になれば、大企業は大きな影響を受けるが、中小企業はもともと大企業から落ちてくるしずくで稼いでいる。嵐がこようと、しずくには関係ない。しずくを求めて稼げばいい」
同じことは個人にもあてはまる。実際、円高不況下でも、個人の生活水準が急落したわけではなかった。盛和塾流の発想では、選択は後者が正解となる。
FP 佐々木昭人氏・伊藤正孝氏の回答
A. 景気の変動に対する個人の対応では、「あわてず騒がず」が正解になるが、「座して何もしない」という意味ではないようだ。重要なのは、好不況にかかわらず、個人のところに落ちてくる「しずく」とどう向き合うかという問題。それは、「景気の先行きをどう読むか」に対する答えともかかわってくる。
佐々木昭人氏は、「景気は読むというより、よくなると信じるもの」だという。それは、稲盛哲学のキーワードの一つ、仏教の「思念は業をつくる」の教えに基づいた「心に描いたとおりになる」という言葉からくる考え方だ。
「人生は、心に強く思ったことが現象になって表れてくる。これは景気についてもいえると思うのです。政権交代以来、東京オリンピック開催決定も手伝い、外部環境の雰囲気はよくなっています。政策の効果もありますが、人々の心理状態が好転してきたことが大きく反映している。景気は〝気.の字がつくように、経済的要素だけでなく、人々の期待感や気持ちのありようが深くかかわる。とすれば、景気がよくなりつつある兆しを感じながら、もっとよくなると、みんなが信じるべきです」