わが家の家計に稲盛和夫なら何とアドバイスするだろうか――。経営者の勉強会「盛和塾」で直々に哲学を学んでいる2人のファイナンシャル・プランナーに徹底取材した。

Q. 「完璧なプレゼンで相手を落とす!ロジカルシンキング養成講座」と「心を磨く、書道のすすめ」、どちらを受講するか。

【ヒント】スキルを磨くならロジカルシンキング養成講座もいい。ただ、「成長」が目的なら、自己投資の対象は変わってくる。
稲盛哲学では「バランスのとれた人間性を備える」ことが求められる。稲盛氏自身、「自分は仕事ではとことん合理主義者だが、一歩仕事を離れれば、対極にある仏の世界など精神的な領域にひたる」と語る。合理性だけでなく、人間性を高めるなら、受講すべきは後者になる。なぜ、バランスが大切なのか。そこには稲盛流の意識の持ち方があるようだ。

FP 佐々木昭人氏・伊藤正孝氏の回答

A. 佐々木昭人氏は本業の傍ら、書道の愛好家でもある。高校時代からで、展覧会での受賞歴も豊富だ。費用は、墨代、紙代、展覧会の出品料など年間100万円はかかるが、書道はビジネス面でもプラスに働いているという。

「稲盛塾長はよく、“仕事では数字で話ができるようにしなさい”といいます。つまり、数字と論理です。一方、書道などの芸術には感性や情緒といった人間性が求められます。それがビジネスにどう生きるのか。例えば、絵画を見るとき、ある部分ではなく、全体を見て感動するはずです。そこに作者の人間性が表れるからです。ビジネスでも、お客様にプレゼンテーションを行うとき、先方は、1時間のプレゼンの途中の10分間の部分のロジックがよかったから契約を決めようなどとは思わず、全体の印象で決めるはずです。ビジネスも芸術と通じるのです」