コミュニケーションとしての数字の強み・特徴を知っている名経営者は、話すときも上手に数字を駆使している。具体性、翻訳、比較……名経営者のテクニックを学ぼう。

数字を語るな数字で語れ

「会計の数字は飛行機の操縦席にあるメーターみたいなもの。実態を表していなければ正しい方向に操縦はできない」(『稲盛和夫の実学』より)

数字にまつわる名言を残した著名な経営者は多い。その発言を集めていくと気がつくことがある。

例えば「10秒考えてわからないものは、それ以上考えても無駄だ」(孫正義)、「素晴らしい計画は不要だ。計画は5%、実行が95%だ」(カルロス・ゴーン)というように、優れた経営者はメッセージに「たくさん」とか「何度も」といったあやふやな表現ではなく、具体的な数字で語っているのだ。

しかも、数字の「3」を用いる傾向がある。「発明には3つのパターンしかない」(孫正義)、「iPhoneには画期的なポイントが3つある」(スティーブ・ジョブズ)。

「3」という数字に強みがあるのだろうか。

「伝えたいメッセージが10あるとします。でも、それを文書で読ませるなら別ですが、談話や講演で伝える場合、10では多すぎて受け手の頭に入らない。メッセージを3つに絞ることでひとつひとつの意味が強調できるし印象にも残る。その意味で3は重要な数字だと思います」

と語るのは、多くの企業人が学ぶグロービス経営大学院の東京校で論理思考系科目を担当する鈴木健一氏。

数字はコミュニケーションのひとつの手段である。数字をキーワードのように使うことで、聴き手の注意を集中させるのだ。

しかし、実際に数字を使って説得力のある話やプレゼンを行うのは、そう簡単なことではない。

「ウチの学生の大半は経営者になることを目標にしており意識は高い。でも、その6割近くは数字を使ったコミュニケーションは苦手と答えます」と語る。鈴木氏はその苦手意識を払拭するコツがあるという。