「がんばって働いているのに、どうして給料が上がらないのだろう」
こんな疑問に日々苛まれているビジネスマンは少なくないはずである。
自分は同期入社のA君より仕事のスピードも速いし、残業だってたくさんやっている。営業ノルマの達成率だってA君より高い。つまり、仕事の密度においても長さにおいても、A君よりはるかにがんばっているのに、A君と自分の給与にはそれほど大きな差がない。これは、あまりにも不当ではないだろうか……。
酷なことを言うようだが、こうした思い込みは、根本的に間違っている。彼は一般的な日本企業において給与がどのように決められているかについて知らない。だから、誤った疑問を抱くだけでなく、努力する方向まで間違えてしまうのである。
たとえば、読者が新しいスポーツを始めようと思ったら、まず何をするだろうか。ほとんどの人が、ルールの勉強からスタートするだろう。どうすれば得点が入り、どうすれば勝ったことになるのか、まずはそのスポーツの「成り立ち」を理解するのが当たり前だ。
では、読者が「給与アップ」という名のスポーツを始めるとしたらどうだろう。やはり最初にやるべきことは、給与がどんなルールで決められているのか、すなわち給与の「成り立ち」を勉強することだろう。それを知らなければ、勝ちようがない。
そこで質問だが、読者は自分の給与がどのようなルールで決められているかを、ご存じだろうか。大半の人が、額面や手取りの金額ばかりに目を奪われて、給与の「成り立ち」について理解していないのではないか。つまり、多くのビジネスマンは、ルールも知らずにスポーツをやっているようなものなのだ。だから、「がんばっているのに給与が上がらない」とぼやくはめになる。ルールを知らずに無闇にがんばったところで、給与が上がらないのは当然なのだ。