このように、いくら価値があっても、使用価値がなければ商品にはならない。同時に、価値がないものが商品になることもない。労力をかけなくても手に入るものを、わざわざ買う人はいないからだ。平地で吸う空気がタダなのは、そのためである。

この「価値と使用価値」という考え方をビジネスマンという「商品」に当てはめてみると、彼の価値は彼が現在の彼であるために投入されてきた諸々の労力、イコール「地力」ということになる。では彼の使用価値は何かと言えば、彼が挙げる成果である。雇い主は彼を使役することによってメリットを得られるからこそ彼を雇う(買う)のであり、彼がまったく成果を挙げなければ雇用することはない。つまり……、ビジネスマンの価値=地力(能力)、ビジネスマンの使用価値=成果ということになる。

さて、ここで思い出していただきたいのが、日本企業における能力給と成果給の比率である。

完全な実力主義を導入している企業には成果給しか支給しないところさえあり、たとえば外資系金融機関のディーラーの給与は、挙げた利益の何%と決められている。そこにマルクス的な「価値」に対する評価は、まったく存在していない。

一方、日本企業では能力給の比率が圧倒的に高いのだ。つまり日本企業の多くは、労働力という商品をマルクス的な視点でとらえているのであり、しかも、使用価値(成果)よりも価値(地力)を重んじるというルールで給与体系を築きあげているのだ。

したがって、一般的な日本企業においては、「がんばって成果を挙げること」は雇用を繋ぎ止めるために必要なもの、という程度の意味しかない。つまり給与を上げようと思ったら、「価値=地力」を高めるべきなのだ。自分の相場を上げて、「高くつく社員」になるべきだと、言い換えてもいいだろう。

▼努力を稼ぎに繋げるためのチェックリスト10

□ 自学自習をしているか
□ 日々の行動目標を立てているか
□ 社内で目の前の仕事に集中しているか
□ 社外で将来のことを考えているか
□ 「ワーク」と「ライフ」をバランスさせていいのか
□ 自己アピールをしているか
□ なりたい自分のイメージを演出しているか
□ 「仕事の報酬は仕事」を意識しているか
□ 「会社の経費で落ちるか」を気にしていないか
□ 経済ニュースを多面的にチェックしているか

※チェックリストのポイントは、【後編】にて解説します