[2]行動目標を立てているか

マルクス的な価値とは、それに注ぎ込まれた労力の総量のことであった。これを裏返して考えてみれば、価値とは、まったく未経験の人とその価値を持っている人とのギャップを埋めるために必要な、経験と知識の総量ということになる。つまり、あなたのビジネスマンとしての価値とは、あなたがやっている仕事を、その仕事をまったくやったことのない素人があなたと同じレベルで遂行できるようになるために必要な、経験と知識の総量のことなのである。

したがって、ビジネスマンとしての価値が高いということは、初心者がちょっとやそっと勉強したぐらいでは追いつけない膨大な経験と知識を持ち合わせていることにほかならないのだ。

こう考えると、自らの価値を高めるために何をすればいいかがよく見えてくる。『5分でわかる○○』式の自己啓発本やビジネス書を読破しても、価値は高まらない。手間ひまかけて、時間もかけて、経験と知識を増やしていく以外にないのである。

要するに、近道はないのだ。近道がないからこそ、多くの人がダイエットを失敗するのと同じように、価値の増大に挫折してしまうのだ。

こうした、ロングスパンの努力を成功させる唯一の方法は、「状態目標」だけでなく「行動目標」を持つことである。「いつかスリムになりたい」という状態目標を持っている人は多い。でもそれを願っているだけでは実際にスリムにはならない。

「夕食に炭水化物を食べない」という“今日やること”を行動目標として持たなければいけない。「英語をしゃべれるようになる」という状態目標を、「1日に最低3つ単語を覚える」という行動目標に置き換える。こうすることによってのみ、大きな労力を必要とする価値の向上が可能になる。よく、「思考は現実化する」と訴える自己啓発本があるが、行動しなければ変わるはずがない。自分の価値を高めるには、思い描くのではなく、実際に行動する以外にないのである。