わが家の家計に稲盛和夫なら何とアドバイスするだろうか――。経営者の勉強会「盛和塾」で直々に哲学を学んでいるファイナンシャル・プランナーに徹底取材した。
Q. 子供が「友達の持っているものを買ってほしい」とねだってきた。稲盛和夫ならどう答えるか。
【ヒント】稲盛哲学に「足るを知る」という指針があり、それは「自分より上と比べない」ことだと前述した。子供が友達の持っているものを欲しがるのは、自分と友達を比べていることになる。もし安易にいわれるままに買い与えた場合、子供はまた、別の子供が持っているものを欲しがるようになるだろう。一つの答え方はこうだ。「ならば、そのうちの子になりなさい」。子供は、それが自分の親を失うことになると直感し、おのれの欲望の小ささを知るだろう。稲盛哲学では、子供は厳しく育てることを求める。その理由を示そう。
FP 佐々木昭人氏・伊藤正孝氏の回答
A. 稲盛哲学は、企業経営における価値基準や行動指針を示したものが多い。その中で、上司の部下に対する接し方を説いた一節がある。
「もし、信念もなく、部下にただ迎合している上司ならば、決して若い人たちのためになりません。それは若い人たちにとって楽ですが、その気楽さは彼らをだめにしていくはずです。長い目で見れば、厳しい上司の方が、部下は鍛えられ、はるかに伸びていくはずです」
このことをわかりやすく諭すため、次のように親子の関係に例える。
「たとえば、かわいいために子どもを甘やかし、そのために成長するに及んで、人生を誤ってしまうということがあります。逆に、子どもを厳しく教育し、しつけていくことによって、素晴らしい人生を歩むということがあります。前者を小善、後者を大善といいます」
そして、こう締めくくる。
「『「小善は、大悪に似たり』と言います。つまり、短絡的に良かれとすることが、本人にとって本当にいいことなのかどうか」(いずれも『心を高める、経営を伸ばす』稲盛和夫著より)
ここに稲盛流の子育て観が表れる。その意味を佐々木昭人氏はこう話す。
「子供が求めるままに何でも買い与えるのは、ほかの子供の親と比べて、自分は力があるんだという、親の自己満足に過ぎなかったりするのです」