競争優位の確立かそれとも戦略なき膨張か
構造改革で業績を回復させ、新たな戦略投資に踏み出そうとしているパナソニック。家電の成長をアジア市場で狙うとの方針を打ち出している。現在、東南アジアにおける同社の売上高のおよそ半分を家電事業が占める。とはいえ、東南アジアの家電市場でシェアの上位を占めるのは、サムスンやLG電子などの韓国勢だ。
パナソニックやシャープなどの日本企業は、機能やデザインの現地化でかつて韓国勢に後れをとった反省から、新たな取り組みを進めている。たとえばインドネシアでは、洗濯機を使用する場合にも、洗濯板で念入りにこすり洗いをする習慣があったり、地域によっては電力供給が不安定だという。そこでパナソニックやシャープは、洗濯板付き洗濯機や、蓄冷材を搭載し停電時に備えた冷蔵庫を投入し、ヒットを飛ばしている。
商品がヒットするのはよいことだ。しかし、グローバル・リーダーをめざすのであれば、散発的なヒットだけでは不十分。これは電機産業だけの問題ではない。地力のある日本企業にとっての課題は、こうした個々の商品のヒットを、企業としてのグローバルな成長につなげていくことである。
そのためには、どのような経営の舵取りが必要なのだろうか。今回は、長らく繰り返されてきた国際マーケティングの論争に目を向ける。
近年の日本では、食品メーカーによる海外企業の買収、あるいはレストラン・チェーンの海外出店などが相次ぐ。以前は海外事業の比率が低かった産業においても、グローバル化へと経営の舵を切る動きが目につく。国内市場の成長見込みの少なさを考えると、これは当然の動きである。とはいえ、単に売り上げを追うだけでは、グローバル化の重要な果実を取り逃してしまう。