かつての宿敵の本拠に乗り込んだダイエーホークス
今、面白いのがパシフィック・リーグ。ペナントレースの行方を占おうというのではない。そのマーケティングが面白いのだ。
パ・リーグの各球団は、かつては親会社のお荷物扱いだった。それはそれで当時はよかった。しかし今は、会計処理や企業統治といった前提が大きく異なる。その中でパ・リーグ球団は着々と、自立した事業体へと転換を果たしつつある。
興味深いことに、パ・リーグ球団のこの新しい動きは、地域の市場を掘り起こすことから生まれている。パ・リーグは地方創生型のマーケティングで元気になっているのだ。
パ・リーグ球団の本拠地は、かつては首都圏と近畿圏に集中していた時期もある。ところが、今ではほぼすべての球団が、地方へと移転したり、地域に根ざそうとしたりする中で経営改善を果たしている。
神戸大学に提出された田中彰氏の博士論文によれば、その先駆けは、1980年代後半に大阪から福岡に本拠地を移した福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス、移転前は南海ホークス)。その後、2004年にパ・リーグで球団再編が起こり、仙台を本拠地とする東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生した。
同年には、北海道日本ハムファイターズも東京から札幌へと移転する。さらにこの頃から千葉ロッテマリーンズ、続いて西武ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)も、事業体制を改めるとともに、地域への密着度を高めるようになる。
昨今の日本では、東京一極集中の弊害が懸念されている。しかしパ・リーグの球団再編後の10年を見ると、逆に地域に根ざしたマーケティングが各球団を元気にしている。