かつては世界の市場を席巻した日本の家電メーカーですが、近年は海外メーカーに押され低迷しています。その象徴がシャープです。台湾企業である鴻海(ホンハイ)精密工業に買収され、日本企業ではなくなってしまいました。

6月29日、ロボット事業への再参入を発表したソニー。(写真=AFLO)

なぜ、これらの企業の競争力が低下してしまったのでしょうか。この現象は、ハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセンが1997年に発表した「イノベーションのジレンマ」で説明できます。

クリステンセンは、イノベーションには2つのタイプがあると述べています。1つは、今ある製品をより良くする、つまり、従来よりも優れた性能を実現して、既存顧客のさらなる満足を狙う「持続的イノベーション」です。テレビのハイビジョン化は、その一例です。もう1つは、既存の主要顧客には性能が低すぎて魅力的に映らないものの、新しい顧客やそれほど要求が厳しくない顧客にとってはシンプルで使い勝手が良く、価格も手頃な製品をもたらす「破壊的イノベーション」です。

破壊的イノベーションは、さらに2つのパターンに分類できます。1つは、これまで製品やサービスをなにも使っていなかった(無消費だった)顧客にアピールする「新市場型破壊」。代表的な製品に、ソニーのウォークマンや任天堂のファミコンなどがあります。ウォークマンは屋内でしか聴けなかったオーディオを屋外に持ち出し、ファミコンはゲームセンターでしか遊べなかったビデオゲームを家庭に持ち込みました。

もう1つは、既存製品の主要性能が過剰なまでに進歩したために、一般消費者が求める水準を超えてしまっている状況(満足過剰な状況)で、一部のローエンド顧客にアピールする「ローエンド型破壊」。典型的な例が、ティファールの電気ケトルです。少量のお湯を短時間で沸かせる機能に絞り、低価格で提供したことにより、15年まで11年連続で日本国内売り上げシェアナンバーワンになりました。ブックオフや俺のフレンチ、ヘアカットのQBハウスなど、サービス業にも例は多いです。