ソニーに期待「新市場型破壊」

では、日本の家電メーカーは、これからどのような道を目指せばよいでしょうか。持続的イノベーションを追求する「王道(実は茨の道なのですが)」をあえて行くのであれば、まだ不十分な性能軸を探し、その向上へと開発目標をシフトする必要があります。

テレビに関して言えば、これまでのように4K、8K、16Kと精細度の向上をひたすら追い求めるのではなく、今後高齢化がさらに進むことを見据えて、「本当の意味で高齢者にやさしいテレビ」をつくるべきではないかと思います。極端に聞こえるかもしれませんが、リモコンは一切付属せず、スマートフォンでは既に当たり前になっている音声認識やAIエージェントの機能を搭載して、話しかけるだけでテレビ操作はもちろん、オンデマンドのコンテンツを楽しめたり、電話や買い物などもオールインワンでできる「頼れる執事」を目指してみる、というのも面白いかもしれません。

白物家電の場合、味覚のように奥が深い性能指標があり、設計・製造両面でも高い安全性・信頼性が求められ、手厚いサポートも必要です。

これらの事業を持つパナソニックは、より賢く使いやすい製品づくりをテーマに、持続的なイノベーションを引き続き追求するのがよいのではないかと思います。

ソニーは、ハイエンドなデジタル家電の分野で持続的なイノベーションを追求しています。専用のヘッドマウントディスプレイを使ってプレイステーション4に接続すれば、ゲーム空間に没入できるようになる「プレイステーションVR」や、アンドロイドOSを搭載し、インターネットの機能を備えたスマートテレビには期待が持てます。一方で、新たな市場を開拓するような製品開発にも力を入れており、スティック型アロマディフューザー、電子ペーパーを使った腕時計やリモコンなど、ユニークな製品も登場しています。こうしたチャレンジの中から今後、新市場型破壊を起こすようなイノベーションが生まれる可能性があるでしょう。

(構成=増田忠英 写真=AFLO 撮影=宇佐美利明)
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