そごう・西武「関西3店売却」と業界大再編

経営トップの人事を巡って揺れたセブン&アイ・ホールディングス(HD)は、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)と資本関係を結び、子会社のそごう・西武が運営する関西立地の3つの百貨店を譲り渡す方向だ。H2Oは、大手百貨店の高島屋とも資本業務提携関係にある。H2O傘下の阪急阪神百貨店を中心に、大型の業界再編に発展するのだろうか?

大学新卒で百貨店に入社し、その後、職場はグループ内のスーパー、それにコンビニに移った人物を取材したことがある。第三者からすれば、時代時代における小売業のメインストリートを歩んだとも見えるが、当の本人は、異動のたびに「格落ち、都落ちだ!」と叫んでいたものだ。

コンビニが小売りの中心を担っている今日では想像もつかないだろうが、かつて小売りのトップに君臨していたのは百貨店。その百貨店が苦境に立たされている。

セブン&アイHDがH2Oとの資本業務提携に動いたのも、百貨店事業を担当するそごう・西武が、グループ業績に寄与していないためである。旗艦店である西武池袋本店こそ、伊勢丹新宿本店、阪急本店に次ぐ売り上げ規模を誇るものの、全店ベースでは稼ぎは少なく、12年度と15年度は最終赤字に転落。そごう柏店の閉鎖などリストラに追い込まれているほどだ。

そもそも、百貨店を取り巻く環境は年々厳しさを増している。ここ2、3年は中国人を中心とした“爆買い”に支えられて売り上げの低迷傾向に歯止めがかかっていたが、ここにきて高級品を中心とするインバウンド需要が急失速。業績予想の下降修正に追い込まれる百貨店も出ているほどだ。大手5社でいえば、売上高営業利益率は高くても4%前半で、1%割れも珍しくないように、利益率は低空飛行が続いている。

百貨店の低迷は、業界再編と距離を置いてきた高島屋の推移を見れば明らかだ。

百貨店事業をダイレクトに反映している高島屋の単体ベースでいえば、2002年2月期の売上高約1兆円は、16年2月期には7000億円と、およそ15年で3割のダウンである。同期間、従業員はほぼ半減。あまり変化が目立たないのは低い営業利益率、それに従業員平均年間給与である。

1000億円を超えていた高島屋の単体ベースの人件費総額は年々減少し、現在は600億円を割り込んでいるように、売上高より減少率は大きいが、同時に従業員も減少しているため、平均給与が維持されているというところだ。