ANAは「国際線の伸び」で躍進。一方、経営破綻したJALはスピード再生で、高収益力を誇る企業として復活した。今後の両社の戦いの行方は――。
ANA躍進の要因は「国際線の伸び」
ANAホールディングス(ANA)が運用する航空機は全体で257機、日本航空(JAL)は226機である(15年度末現在)。そのうち、カタログ価格が200億円を超すボーイング787型は、ANA46機(リース含む)、JAL26機(すべて所有)の運用だ。それが航空機1機平均の帳簿価額に反映しているのだろう。ANA36億2500万円に対して、JALは24億8000万円である。
ANAとJALを徹底比較してみた。
2010年1月に経営破綻したJALは、2012年9月に再上場とスピード復活を実現したが、経営再建の過程でスリム化を図ったこともあり、売り上げ規模そのものは縮小。15年度の売上高1兆3366億円は、ピークの06年度2兆3019億円からは、ほぼ1兆円近いダウンである。
一方、11年度の売上高がJALをはじめて上回ったANAは、その後も売上高を伸長。JALとの差を引き離している。
ANA躍進の最大の要因は、国際線の伸びである。国際線運航による収入そのものは13年度にJALを逆転していたが、旅客数でも15年度に上回った。ANAは、名実ともに国内トップの航空会社になったということ。採算性を重視してジャンボ機の交代を急ぎ、ホテル事業も事実上売却するなど、早くからリストラを進めた効果もある。
リース債務を含む有利子負債は、JAL900億円台に対し、ANAは7000億円台である。利益の蓄積を示す利益剰余金、いわゆる内部留保は、JALが大幅増加での推移だ。ANAの借金はJALの7.7倍規模、内部留保は2分の1以下である。