JALはリストラで高収益企業として復活
5年間のその他の経営指標も見てみよう。
11年度から15年度にかけての5期合計の経常利益額は、ANAが3862億円、JALは9256億円である。年平均にするとANAは772億円、JALは1851億円となる。同じように当期純利益も「415億円対1696億円」と、利益幅はJALがANAを上回っていることが明白である。
キャッシュの出金と入金を示す営業活動CF、投資活動CF、財務活動CFは、JALがANAを上回る。本業で獲得するキャッシュはもちろん、キャッシュでの投資額、借入金の返済や配当へ充当するキャッシュのいずれもが、JALの方が規模が大きいということだ。事実、年平均の配当額は、JAL285億円に対しANAは132億円である。
JALは約2兆3000億円の負債総額を抱え経営破綻。その後、結果的に国に売却益3000億円をもたらしたものの、3500億円の公的資金の投入を受け入れた経緯がある。5000億円を超す債権放棄も受けた。JALの有利子負債が少ないのはそのためである。稼いだ黒字と過去の赤字を相殺するという繰越欠損金制度があり、法人税を軽減できるという恩恵も受けている。JALの方が、支払法人税等が少ない要因である。
一方、JALは徹底的なリストラを経て、身軽な経営体質を実現したのも事実。各種利益はもとより、投資活動や配当に回せるキャッシュもANAを上回る。高い収益力を誇る企業として復活したといっていいだろう。
両社の収支を1万円のチケットにたとえてみると、原価と経費の水準を低く抑えているJALの営業利益はこの5期、ANAの2~3倍の水準での推移である。
ANAは「JALとの間で公平な競争関係が保たれていない」と牽制する一方で、JALと提携関係にあったベトナム航空に117億円出資するなど、一段の攻勢姿勢を示している。JALに対する新規投資やM&A(企業の買収・合併)などへの制限は今年度で切れる。これからもANA対JALの厳しい競争が続くことはいうまでもない。