材料費や人件費が上がる中、小さな飲食店が赤字から脱却するにはどうしたらいいのか。飲食店を専門とする中小企業診断士の難波三郎さんは「着目すべきポイントの一つが人件費。売上に対して適正な人件費かどうかを見る必要があり、レイアウトやメニュー構成を変えることで作業の効率化を図ることも重要だ」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、難波三郎『小さな飲食店のお客が減らない値上げ』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

ラーメン屋さんのカウンターから見えるキッチン
写真=iStock.com/ake1150sb
※写真はイメージです

「人時売上高」で確認する

人件費を考えるときに役立つ、「人時売上高」という考え方があります。「売上を総労働時間で割る」が公式です。

総労働時間とは、お店を運営するために働いた、社長や家族、パートの労働時間の合計のことです。簡単にいえば、「店員が1時間働いて、得られる売上」です。ここに、経理作業の時間などは含めないのが一般的です。

使い方としては、特定の時間の売上に対して、適正な人件費になっているかを確認することが多いです。

大きなお店の場合は、人員が多いので労働時間を簡単に調整できますが、小さなお店の場合は人員が少ないので、調整が難しいです。ランチタイムを例に、あまり忙しくないお店と、ピークはウェイティングがかかるお店に分けて説明します。

まず、あまり忙しくないお店の場合ですが、人時売上高はかなり悪いはずです。あと数カ月で忙しくなると思える状況なら、今のまま続けてもいいですが、まだ赤字が続きそうなら根本的に人数を見直すのも一案です。

「いや、減らすと運営できないんだよ」と思われるかもしれませんが、逆の発想をしてみてください。「減らした人数で今の売上をキープするには、何をすればいいか?」と考えるのです。

ホール側であれば、水とライスのおかわりをセルフにすることもできます。キッチン側だと、アイテム数を減らしたり、提供商品の見直しも可能です。

人件費削減は値上げよりずっと楽

私は年に3回、飲食店の創業者向けの連続セミナーを行っています。その中には「1人でお店を運営したい」という方が、少なからずいます。

1人で運営して、月商100万円を超えられるパターンは決まっています。

まず、たこ焼き店、ケバブ店のような単品商売のお店です。このタイプは、同じことの繰り返しなので生産性が高いです。

次に、仕込みに時間はかかっても、提供時間は短い商品で構成された、具体的にはバルやオーブン料理のお店です。このタイプは、トゥーオーダー(オーダーが入ってから行う業務)の負荷が低いので、少人数化が可能です。

キッチン業務を「繰り返しだけ」に近づける。トゥーオーダーの負荷を下げる。ホールをセルフ化する。これらはきっと、ヒントになるはずです。人件費の削減は、そのまま利益に乗っかるので、下手をすると値上げよりずっと楽です。ぜひ検討してください。