セブン&アイ“脱カリスマ経営”は成功するか
もちろん、各社は抜本的な経営の立て直しにチャレンジしていることはいうまでもない。
三越と伊勢丹の統合会社、三越伊勢丹HDは、売上高日本一の伊勢丹新宿本店、それに店舗としては資産価値が日本一の三越日本橋本店を両輪に、独自商品や小型店舗の開発にも着手。百貨店としてのさらなる付加価値を創造しようというわけだ。
大阪店、日本橋店、横浜店の3店舗で1日の売上高が3億円を超えているように、平均的に稼ぐ店舗が多い高島屋は、海外展開をテコにした成長戦略を推進。シンガポール、中国・上海、ベトナム・ホーチミン店に続き、17年にはタイ・バンコク店を開業する。
大丸と松坂屋で結成したJ.フロントリテイリングは、ファッションビルを展開しているパルコを子会社にしたように、脱百貨店を指向。松坂屋銀座店跡地は商業施設に生まれ変わり、百貨店としての復活はない。積極的にテナントを誘致するなど、ビル賃貸業やショッピングセンター化を推進しているが、その象徴は大丸東京店だ。
JR東日本に年間53億円の賃料を支払っている大丸東京店の1人平均単価は2000円弱と、神戸店の7000円強と比べ安価だが、弁当購買客など1日の集客は10万人を超す。1日平均売上高は2億円。それでいながら店舗運営スタッフは、パートを含めても約80人。テナント中心の店舗になっているからだ。
阪急百貨店と阪神百貨店が経営統合して誕生したH2Oリテイリングは、阪急本店や阪神梅田本店を中心に、年商3000億円規模で100店舗に迫るスーパーのイズミヤを傘下に収めるなど、関西で集中出店。そこに、そごう神戸店など、そごう・西武の関西3店舗を加える予定だ。
そごう・西武が譲渡を予定している関西3店合計の店舗従業員は406人、パートは650人である。店舗資産価値は324億を超す。それら3店舗を含め、そごう・西武傘下の全店の行方にも注目したい。コンビニのセブンイレブンを中心とするセブン&アイHDが、不振事業の百貨店事業、それにイトーヨーカ堂を中心とするスーパー部門をどう立て直していくのか。鈴木敏文最高経営責任者(CEO)を退陣に追い込んだ、井阪隆一社長ら新経営陣の手腕が問われる。