次期・日本経団連会長 米倉弘昌(よねくら・ひろまさ)
1937年、神戸市生まれ。東大法学部卒。60年に住友化学工業(現・住友化学)に入社。国際畑の仕事が多いなか、若いときから社長のスタッフとして財界活動にも参加した。2000年6月に社長、09年4月から現職。
日本経団連の御手洗冨士夫会長が、5月の2期目の任期満了を控え、後継会長に住友化学の米倉弘昌会長を指名した。そのことを公表した1月27日夕の同時刻に、米倉氏はスイスのダボスで、国際化学工業協議会のメンバーである世界の大手化学会社のトップらを前に、地球温暖化問題や省エネ対策について、取り組むべき課題と進路を取りまとめていた。
会議は、当然、英語オンリーで、通訳もいない。米倉氏は、多様な技術用語や科学用語を含めて、流暢な英語で仕切っていく。欧米の著名な経営者らが、それを、ごく自然に受け入れる。この光景に、米倉氏が次期経団連会長に選ばれた理由が、凝縮されている。
際立った国際感覚と英語力、地球的課題への深い理解と積極的な姿勢、内外の豊富な人脈。日本が必要としているビジネスリーダーの要件を、米倉氏は十分に満たしている。無論、経済界には、ほかにも決断力や先見性などに優れた経営者はいる。また、住友化学は歴代の経団連会長を輩出してきた企業に比べ、その規模で見劣りもする。それでも、御手洗氏は米倉氏を選んだ。
20代で米国に留学し、30代前半にニューヨークで勤務。その後も、インドネシアでのアルミ精錬、シンガポールの石油化学コンビナート建設、サウジアラビアでの巨大合弁事業など、相手国政府との協議や海外企業との交渉を豊富に経験した。際立った国際派だ。
その強みこそが、そのまま、新・財界総理としての課題につながる。存在感を増す中国と欧米との谷間で、国益の確立も国際的な貢献も歯がゆい状況に置かれている日本。早急に民間自らの手で成長戦略を策定し、世界へ発信して、日本の輝きを取り戻す。米倉氏の新たな旅立ちに、立ち止まりは許されない。