副総理・内閣府特命担当大臣・財務大臣 菅 直人(かん・なおと)
1946年、山口県生まれ。東工大学卒業。80年の衆院選で初当選。社会民主連合副代表、新党さきがけ副代表、民主党代表などを歴任。鳩山内閣で副総理・国家戦略担当・内閣府特命担当大臣に。今年1月、財務大臣就任。


 

民主党政権にかろうじてリベラルというイメージがあるとしたら菅直人氏がいるからだろう。他の主要メンバーのほとんどは、自民党離脱組や松下政経塾出身である。

生粋の市民運動出身者として常に革新勢力のリーダーだった。そんな出自もあってか、自民党やマスコミからは常に攻撃の対象となってきた。頑固で短気な性格も災いしてついた渾名は「イラ菅」。その一方で、実はかなりの目立ちたがり屋でもある。

橋本内閣で厚生大臣だったときのO-157事件では、自らの発言で風評被害を招いたカイワレ大根をカメラの前で食べて安全性をアピールした。薬害エイズ問題では、厚生官僚の責任を突き止め、厚生大臣として被害者の前で土下座して謝罪した。日本長期信用銀行などが破綻の危機に直面していた1998年の「金融国会」では、非常事態と判断して菅氏が代表だった民主党を中心に、超党派で金融再生法の成立に尽力している。

そんな菅氏が、財務大臣に就任した。脱官僚の急先鋒が本丸に乗り込んだ形になった。就任直後、異例の口先介入で為替市場を混乱させたが、誰も手をつけなかった消費税論議に正面から取り組む姿勢を見せている。マニフェストの実現や財政赤字解消のためには消費税率アップは不可避だが、国民をどう説得するかが問題になる。菅氏の役割は、これからの民主党政権の命運を担うといっていい。

民主党は、当初から「財務官僚から予算編成権を奪う」と主張し、事業仕分けなどを進めてきたが、頑固一徹な菅氏のような存在がいなければ、したたかな財務官僚には太刀打ちできない。特別会計への切り込みも、これからが本番だ。菅氏の手腕が日本の未来を左右するかもしれない。