なぜ専業主婦の「特典」はなくなる運命か?

前回は、日本国内において、今なお専業主婦の世帯が720万にのぼるのは、かつて高度成長期に半ば「国策」として専業主婦の優遇策を推進したことが大きいという話をしました。

その「優遇策」とは、会社員の妻が「配偶者控除」(税額軽減)を受けたり、第3号被保険者として自分で厚生年金や国民年金の保険料を払わなくても老後に年金が支給されたりすること(家計を助けるためパートで働くときも収入が一定の「基準」をオーバーしなければ、第3号被保険者のままでいられる)。

高度成長期をけん引したのは製造業(≒工場)でしたので、国は男性(夫)を長時間働かせて企業業績をアップさせることで、国力を上げようとしました。工場の理想は24時間稼働ですから、自ずと長時間労働が好まれることになるのです。当時の女性たちは「保険料を払わなくても、老後に年金がもらえるなら」と自宅で子供を育て、連日残業で働く夫のバックアップに専念することにある種の納得感を感じたのでしょう。

ただ、こうした政策を可能にしたのは、3つの前提条件が整っていたからでした。

(1)冷戦構造(アメリカは、不沈空母としての日本を庇護)
(2)キャッチアップモデル(「アメリカに追いつけ、追い越せ」)
(3)人口の増加

現在、この3つの条件はすべてなくなってしまいました。80年代後半にアメリカに(一時ですが)1人当たりGDPで追いついてしまった日本は、今や少子高齢化や財政再建など課題が山積の課題先進国となってしまいました。

戦後40年間の経済成長率は実質で約7%ありましたが、この3年間のそれはわずか0.5%程度です。給与もほとんど伸びていません。よって、夫だけの稼ぎでは生活は苦しくなるばかりです。

結果的に「高度成長期のビジネスモデル」は機能しなくなり、人口の減少により女性に働いてもらわないと、我が国の経済自体が回らない時代になったのです。そこで国は、かつて主婦に与えた「特典」をなくし始める動きに出ています。